外注費 インボイス

2023/11/15  2024/10/4

【永久保存版】外注費がインボイス制度で変わる?消費税や控除を徹底解説

2023年10月1日よりインボイス制度が施行され、消費税の仕入税額控除に関するルールが大きく変更されました。その中の一つに、外注費に含まれていた消費税の取り扱い方が変更になるというものがあります。

これまでは、外注先の事業者が個人事業主でも企業でも、外注費用のうちの消費税分は仕入税額控除を受けられました。しかし、インボイス制度が施行された現在は、外注先が適格請求書発行事業者でなければ、仕入税額控除が受けられません。

そこで本記事では、インボイス制度の基礎知識や、施行により外注する事業者側と受ける側の対応はどう変わるのかをくわしく解説します。インボイスに対応したものの、具体的にどうすれば良いのかわからないという人は、ぜひ参考にしてください。

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インボイス制度とは

インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれる、2023年10月1日から導入された新しい制度です。日本では現在、10%と8%の消費税率が混同している軽減税率が適用されています。そのため、消費税額をより正確に算出するためにインボイス制度が施行されました。

事業者はインボイス制度の導入により、要件を満たしている適格請求書(インボイス)に基づいた、消費税の仕入税額控除の金額を計算する必要があります。そこで事業者は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除について把握しておく必要があるのです。抑えておくべき点が2つあるので、下記でくわしく解説します。

複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式

8%と10%の消費税率が混在する複数税率は、2019年10月から導入されました。その際、取引ごとに消費税率と消費税額が記載された区分記載請求書等保存方式が必須になりましたが、この方式では正確に消費税額を把握できなかったのです。これは税率ごとに消費税額を記載する項目が必要なかったのが大きな理由になります。

そこで正確な消費税額を把握するために導入されたのが、2023年10月から施行されたインボイス制度です。インボイス制度が導入されるまでは、ある条件に該当した免税事業者の場合、仕入税額控除を受けられました。しかし、インボイス制度においては、インボイスの発行と保存ができない事業者を外注先にしてしまうと、仕入税額控除が受けられなくなるのです。

施行後は仕入税額控除に適格請求書が必須に

インボイス施行後に仕入税額控除を受けるには、適格請求書発行事業者となり、適格請求書が必須となります。外注先の事業者が免税事業者である場合、適格請求書は発行できないため、課税事業者でかつ適格請求書発行事業者は仕入税額控除を受けられません。そのため、外注先の事業者がインボイス登録事業者であることの確認が必要です。

ただし、免税事業者に外注したときに急激な変化を避けるため、期限はありますが特例措置が設けられています。

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請求書の書式が変わる

適格請求書を発行する際、これまで取り扱っていた区分請求書とは書式が異なり、以下の記載項目を満たしていなければなりません。

・請求書発行者の氏名または名称および登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
・税率ごとに区分して合計した税込対価の額および適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
・請求書受領者の氏名または名称

小売業やタクシー業などの、不特定多数にサービス提供する業種は、表記が少し簡易化された適格簡易請求書の交付が認められます。それらに該当しない業種は、上記の項目を記載している適格請求書を作成しましょう。

インボイスは適格請求書発行事業者のみが発行可能

インボイス制度において、適格請求書を発行できる事業者は適格請求書発行事業者のみと決められています。事業者は、課税売上高が1,000万円未満なら免税事業者、1,000万円以上なら課税事業者と2つに区分され「課税事業者のみ」が適格請求書発行事業者になることが可能です。

片や、免税事業者は売上規模が小規模であることから、消費税納税義務が免除されているため、適格請求書発行事業者になることはできません。免税事業者が適格請求書発行事業者になるには、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出して課税事業者となる必要があります。また、その上で適格請求書発行事業者の登録を申請することで、やっとインボイス発行が可能となるのです。

インボイス制度によって事業者側が対応すること

適格請求書発行事業者の登録が完了した事業者は、最初に適格請求書の内容を変更しましょう。前述した6つの項目を記載したフォーマットを準備する必要があります。このとき、消費税率ごとに端数処理は1回のみというルールがあるため、商品・サービスごとに端数処理されないように注意してください。

また、免税事業者に対する請求書と、適格請求書とで分けて管理しなければなりません。税額計算時に混乱しないよう、明確に区分しておきましょう。その際、インボイスに対応した適格請求書を発行できるシステムの導入も検討しておくのがおすすめです。インボイス非対応のシステムを継続して使用すると、経理が煩雑化してしまい、トラブルが起きる原因になりかねません。

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課税事業者は適格請求書発行事業者に登録

インボイス制度導入後、事業者側がまず対応することは、課税事業者の場合は適格請求書発行事業者の登録申請を行うことです。2023年9月30日までに登録申請を行った人は、2023年10月1日から適格請求書を発行できますが、間に合わなかった人でも問題なく申請できます。

ただし、10月に間に合わなかった人が10月分から適格請求書を発行できるわけではありません。というのも、適格請求書に記載する登録番号は税務署から通知されるため、登録番号の通知が遅くなるほど、最初の適格請求書を発行できるのが遅くなってしまうのです。通知には2週間から1ヶ月かかります。そのため、元々課税事業者で受注先が仕入税額控除を必要としている状況であれば、早めに登録申請しておかなければなりません。

申請方法は、国税庁のオンラインで完結できるe-taxか、紙での申請となります。利用しやすい手段で登録申請を行いましょう。

免税事業者は登録すべきか検討が必要

法人は事業の前々年度、個人事業主は前々年の課税売上高が1,000万円に満たない場合は、免税事業者に該当し、消費税の申告や納税義務がありません。しかし、課税事業者と同様に、外注するときに消費税を支払っています。そのため、免税事業者でも消費税を請求することは可能です。

とはいえ、免税事業者は適格請求書の発行ができないため、課税事業者が外注先になってしまうと仕入税額控除が受けられません。その点インボイスを導入すると、仕入税額控除が受けられるだけでなく、適格請求書によって消費税率ごとの消費税額が記載され、正確な消費税額を把握できるようになります。また、複数税率による計算ミスや不正の発生率を大幅に軽減できるので、より透明性のある経理ができるようになるのです。

何より、取引先も適格請求書発行事業者だった場合、相手が仕入税額控除を受けられるために契約継続が期待できます。インボイス登録をしていない場合、相手は仕入税額控除の恩恵を受けられないために継続打ち切りになる可能性があるのです。

それにより、免税事業者は自身の収入や契約状況を鑑みながら、適格請求書を発行できる課税事業者になるか免税事業者のままでいるか、どちらがメリットが大きくなるか検討が必要になります。

経過措置について

適格請求書発行事業者の課税事業者は、免税事業者が外注先でも、これまでと同様に契約は継続できます。しかし、課税事業者が仕入税額控除ができないために不利な状況であることに変わりありません。

そのため、免税事業者への外注費用にかかる消費税額は、今後段階的に廃止になっていき、場合によっては課税事業者になるように要望される可能性があります。段階的な経過措置については、後述でくわしく解説します。

仕入税額控除のための経理事務

インボイス導入により、外注先が適格請求書発行事業者で課税事業者である場合と、免税事業者である場合とでは、請求書を区分する必要があります。そのため、全ての取引先に適格請求書発行事業者なのかどうかを確認しなければなりません。また、適格請求書の写しは7年間の保存が義務付けられ、保存されていない場合は仕入税額控除を受けることができなくなってしまいます。

会計処理も、課税事業者と免税事業者で仕分けなければならないため、注意が必要です。これまでは売上と仕入れにかかる消費税額の計算は「割り戻し計算」と言われる計算式でした。これは売上に対する消費税額から、仕入れに対する消費税額を差し引く方法です。しかし、インボイス導入後は、請求書に記載する消費税額を足して積み上げたものを売上・仕入れに対する消費税額とする「積み上げ計算」もしくは「割り戻し計算」の2種類から選ぶ必要があります。

売上に対する消費税額に割り戻し計算を選択すると、仕入れに対する消費税額には2種類のいずれかが選択可能です。しかし、仕入税額を計算するときは2種類の併用ができないため、会計処理が煩雑化することが予想されます。

併せて読みたい関連記事

インボイス制度施行後の外注費への影響

これまでは、外注先が免税事業者でも課税事業者でも「外注費」という勘定科目で経費計上でき、そのうちの消費税分も仕入税額控除をうけられました。しかし、インボイス制度が施行されてからは、外注先が適格請求書発行事業者でない限りは仕入税額控除が受けられません。

そのため、外注前に適格請求書発行事業者かどうかの確認、免税事業者にはこれまで通りに外注するかどうかを必ずチェックしましょう。

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仕入税額控除の適用を受ける要件が変化

インボイスを導入すると、外注先が適格請求書発行事業者で課税事業者なのか、免税事業者かで仕入税額控除が異なります。特に、外注先が免税事業者の場合はインボイス導入前と比べると大きく異なり、急激な変化に対応するための経過措置も用意されているため、これから導入を検討している人は参考にしてください。

外注先によって仕入税額控除が異なる

外注先が適格請求書発行事業者かどうかによって、仕入税額控除ができるかが決まります。外注先が適格請求書発行事業者の場合と、免税事業者の場合の違いを解説します。

適格請求書発行事業者の場合

外注先が適格請求書発行事業者の場合は、適格請求書を発行してもらえるため、仕入税額控除を受けることができます。インボイス制度が施行されるまでは、支払額が3万円未満(税込)の場合は帳簿での保存のみで仕入税額控除が可能という特例がありました。しかし、インボイス制度施行後は、支払額が3万円未満の取引をしても、適格請求書を発行してもらわなければなりません。

なお、基準期間における課税売上高が1億円以下もしくは特定期間の課税売上高が5,000万円以下の「小規模事業者」に該当する場合は「少額特例」が認められています。これは、支払額1万円未満(税込)の場合に限りますが、適格請求書がなくてもインボイス施行前同様に、帳簿の保存のみで仕入税額控除が受けられるというものです。

免税事業者の場合

外注先が免税事業者だった場合は、個人事業主・法人・フリーランスといった事業形態を問わず、適格請求書の発行ができないため、仕入税額控除を受けられなくなってしまいます。つまり、自社が消費税を負担しなければならなくなるということです。

外注先に適格請求書発行事業者と免税事業者のどちらもいる場合は、前述でも記しましたが、それぞれで請求書を分ける必要があるため、会計処理が煩雑化する恐れがあります。そのため、外注する前に、今後は適格請求書発行事業者に変わる予定があるのかを確認しておくと、今後の取引の参考になるでしょう。

6年間は経過措置がある

適格請求書発行事業者以外の事業者に外注する場合、課税仕入れに係る6年間の経過措置が設けられています。

3年ごとに控除可能な仕入税額の割合が減少し、6年後の2029年10月1日には、免税事業者もしくはインボイス対応していない課税事業者からの仕入れ税控除が完全に廃止されてしまいます。廃止後は適格請求書発行事業者が自腹で納税することになるため、免税事業者への外注取りやめとなる可能性がかなり高いでしょう。

2024年10月の変更点

インボイス制度が開始して1年が経過した2024年10月1日以降に適用されるものが2つあるので注意しましょう。

適格請求書発行事業者以外の課税仕入れに関する経過措置の見直し

インボイス制度開始から行われている経過措置の内容が見直されます。同一の取引先に対して事業年度中に10億円以上の取引を行った場合、10億円を超えた分の金額については経過措置が適用されません。

国外の事業に対する簡易課税制度

国内の事業者と国外の事業者の公平性を保つために国外事業者に対する簡易課税制度の適用排除が行われます。これは所得税法、法人税法上の恒久的施設を有していない国外事業者が簡易課税制度の適用を受けられなくなるといった内容です。

【まとめ】外注費が複数ある企業はシステムの導入がおすすめ

インボイス制度施行により、課税事業者と免税事業者だけでなく、課税事業者の適格請求書発行事業者という新たな枠が増えました。仕入税額控除の適用有無が、適格請求書発行事業者であるかどうかが大きく関係してきます。

外注先が複数ある場合、全ての外注先へ免税事業者か適格請求書発行事業者かの確認を行い、それぞれの会計処理に対応していかなければなりません。外注先が多いほど、計算ミスやトラブルの発生確率は比例して上昇します。そこで、会計作業を一元化できるシステムを導入しておくと、トラブルをあらかじめ防止することが可能です。請求業務を大幅に効率化できるので、自社に合うシステムの導入を検討してみてください。

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