製造原価 求め方

2023/11/10  2024/4/23

製造原価とは?売上原価との違いや求め方、分類を解説!内訳や計算方法まとめ

製品を製造する際にかかる費用である、製造原価。製造業を運営する際、製造原価は利益に大きく影響するため、正確に計算・分析することが求められます。しかし製造原価は材料費・労務費・経費など複数の種類があるため、理解するのが難しい項目です。売上原価との違いや適切な計算方法がわからず、悩んでいる人も少なくないでしょう。

本記事では、売上原価との違いや具体的な分類方法などの観点から、製造原価の概要について詳しく紹介します。製造原価の計算方法や注意するポイントも解説するので、製造原価を正確に理解したい人や製造事業に関わる人はぜひ最後まで読んでみてください。

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製造原価とは一般的に何を示すのか

製造原価とは、製品を製造する際にかかった費用の合計です。製造業では利益を得るまでに、原材料を仕入れて製品を製造し、販売する工程があります。製造原価には、製品を仕入れて製造するまでにかかる、原料・設備費用・水道光熱費・人件費などが含まれます。販売する工程でかかったコストは、製造原価に関わらない点に注意しましょう。

企業・事業における「原価」とは、商品やサービスを製造・提供する際にかかるお金のことです。原価は大きく以下の2種類に分けられます。

原価の種類
  • 仕入原価:小売店で、すでに完成している商品を仕入れて販売するときの原価
  • 製造原価:製造元が、原材料を仕入れて製品を製造するまでにかかる原価

また、製造原価の中には後ほど解説するように、材料費や労務費、製造経費と更に細かく分類されます。多くの会社で一般的に原価と呼ばれるのは主に製造原価の部分を指していることが多いです。

製造原価を正しく把握することの必要性

「原価」という大きな分類ではなく、「製造原価」として正確に把握する必要があるのは、以下3点が理由です。

・製造工程で課題を発見しやすくなる
・適切な販売価格を設定できる
・製品をどこで製造するかの判断に役立つ

製造原価を正確に計算できると、どの部門・工程でいくら費用をかけているかわかるため、課題を発見しやすくなります。コストがかかりすぎているなどの課題が見つかれば、コストを最適化・改善するための施策を考えられるでしょう。

適切な販売価格を設定できることも、製造原価を把握することのメリットです。たとえば原価が販売価格より高くなると、商品が売れるほど赤字が大きくなるリスクがあります。一方で製造原価を下げるために、販売価格に見合わないほど低い質で商品を製造すると売れません。製造原価を正しく分析してニーズに合った最適な販売価格を考えられれば、企業の競争力強化にもつながるでしょう。

どの製品をそもそも製造するのか、どこで製造するか、などを判断する際にも、製造原価の把握が重要です。製造場所や対象の製品を選ぶ際、予算を作成します。予算の作成・管理にあたって、過去の製造原価の情報を参考にすることが一般的なので、適切に製造原価を分析・計算することが必要です。

売上原価との違い

製造原価と、よく似た言葉である「売上原価」を混同する人も少なくないでしょう。製造原価と売上原価は、定義・対象となる費用・計上する目的などが異なります。

売上原価とは小売業でよく使われる用語で、売れた商品にかかった原材料費・労務費・販売費などの費用を指します。売れた商品が対象なので、売れていない商品には売上原価が発生しません。売れていない商品の原価も売上原価に含めると、売上高から原価を差し引いたときに赤字になることが理由です。なお、売上原価は販売利益を把握する目的で、製品が売れた時点で計上します。

一方で製造原価とは、製品を製造する際にかかった費用を示します。製造原価は商品が売れたかを問わないため、製品を製造するためにかかった費用をすべて含むのが特徴です。製造原価は製造コストを把握する目的で、製品を製造したタイミングで計上します。

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製造原価の具体的な分類方法

製造原価と一言でいっても、材料費・労務費・経費の3種類に分類できます。各分類は製造原価の計算式に関わるため、具体例とともに各分類の特徴を確認しましょう。

材料費

材料費とは、商品を製造するときに使う材料や燃料、消耗品にかかる費用です。製品の原材料を仕入れる費用や、部品の買い入れ費用、製造過程で使う機器の費用、機器を動かす燃料費、工具や備品など、製造過程で使うものが含まれます。具体例は、以下のとおりです。

材料費の一例
  • 自動車製造におけるスチールやガラス、プラスチック
  • 衣料品製造におけるボタンやファスナー、生地
  • 製造機器を動かすためのオイルや燃料
  • 組み立てで使うネジや金槌、ドライバー

製造原価のなかで特に、製品を製造するときに消費するものが材料費に含まれます。燃料・消耗品・備品は忘れられやすいので、覚えておきましょう。個人事業主は、確定申告により材料費を必要経費にできます。

労務費

労務費とは、製品の製造に関わった従業員へ支払う原価です。従業員であれば、アルバイト・パート・正社員など、雇用形態を問わず対象になります。具体例は、以下のとおりです。

労務費の一例
  • 従業員の給与
  • ボーナスや報奨金、通勤手当、家族手当などの各種賞与・手当
  • 退職金や退職金として積み立てた費用
  • 社会保険料や社宅、健康診断費用、食事代などの福利厚生費

人件費と同じと考えられる傾向がありますが、あくまで「製造に関わった人」に支払う給与・賞与・手当などが労務費になる点に注意しましょう。また小売業・販売業などでは、人件費を販売費として分類します。

経費

経費とは、材料費や労務費として分類できない、製造過程でかかった費用を指します。具体例は、以下のとおりです。

経費の一例
  • 工場の賃貸料
  • 水道代や通信費などの光熱費
  • 使用している大型機器設備などの減価償却費
  • リース料金や外注費
  • 製品の製造に必要と判断された従業員の出張費

直接製造に関わっているか明確でない場合でも、工場の運営や製造過程で欠かせない費用は経費に含まれます。ただし従業員の出張費については、工場の技術担当者なら製造原価の経費になりますが、営業担当の場合は販売費になる点に注意してください。

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製造直接費と製造間接費について

製造原価は、材料費・労務費・経費の3種類だけでなく、製造直接費と製造間接費の2種類にも分けられます。

製造直接費と製造間接費の違い
  • 製造直接費:製品の製造やプロジェクト自体に関わる、または特定の製品やプロジェクトに関連する費用
  • 製造間接費:製品の製造やプロジェクト自体に直接関わらないが必要な費用、または複数の製品やプロジェクトを横断してかかる費用

材料費、労務費、経費を直接費と間接費に分類した場合の特徴について、具体例と合わせて解説します。

直接材料費

直接材料費とは、特定の製品に直接使われる材料費です。製品を構成する金属や、製品の一部として使われるネジなどの外部から購入する部品が含まれます。具体例は、以下のとおりです。

直接材料費の具体例
  • 自動車製造で使うスチール
  • 衣料品製造で使う生地
  • 部品同士をつなぐネジ

直接材料費を把握できると、製造方法を効率化したり在庫管理によりコストを削減したりできます。

直接労務費

直接労務費とは、製品の製造に直接関わる業務に携わった、従業員の人件費です。具体的には、製品を加工したり組み立てたりする現場作業員の給料などがここに含まれます。

直接労務費を分析すると、製品量に対して残業が多かったり手が空いている従業員がいたりするなどの課題を発見できます。製造過程や製造場所、部門ごとの負担を把握することで、無駄なコストを削れるでしょう。

直接経費

直接経費とは、直接製品の製造に関わるものの、材料費や労務費に分類できない費用を指します。具体例は、以下のとおりです。

直接経費の具体例
  • 製品製造に直接関わる機器の減価償却費
  • 製品開発を目的に出張した人の交通費や旅費
  • 外部に委託した製造工程の外注費用

社内の設備やノウハウが足りず、直接材料費や直接労務費に無駄がある場合は、外注して直接経費を高くしたほうが製造原価全体を下げられる可能性があります。直接経費は項目が多いので、計上する際は注意が必要です。

間接材料費

間接材料費とは、特定の製品に使った量がわからない材料費です。間接材料費は以下の具体例のように、工場消耗品費・補助材料費・消耗工具器具備品費の3つに分類できます。

間接材料費の分類と具体例
  • 工場消耗品費:機器を動かす燃料や潤滑油
  • 補助材料費:製造時に補助的に使う塗料や接着剤
  • 消耗工具器具備品費:金槌・のこぎり・机などの1年以内に買い換える工具

製品を製造するときに消費されているものの、製品の構成要素に含まれないものが間接材料費と判断される傾向があります。

間接労務費

間接労務費とは、現場の従業員以外の労務費です。たとえば、生産管理者や品質管理、機械の修繕や清掃を行う従業員などの給料や、製品の製造に関わる従業員の賞与・手当・退職金・有給休暇・休業手当・福利厚生などが該当します。

現場の従業員であっても、設備エラーや材料不足などにより一時待機している時間の給料は、厳密には間接労務費に含まれる点に気をつけましょう。

間接経費

間接経費とは、製品の製造に必要な経費のなかで、特定の製品との関わりが不明確な経費です。

間接経費の一例
  • 工場の賃貸料
  • 水道代・通信費などの光熱費
  • 租税公課
  • 会議費

間接経費は、製品製造との関連性を明確化することが難しいので、計上しない企業もあります。しかし間接経費を明確にすること利益を改善できるケースが多いので、重要な項目でしょう。

製造原価の求め方・計算方法

本項では製造原価を求める際に使用する計算式を紹介し、計算方法について詳しく解説します。

製造原価の計算式と求め方

製造原価は、直接材料費・直接労務費・直接経費・間接材料費・間接労務費・間接経費の6種類を合計して求めるのが基本です。しかし、常に製品の製造が完了しているわけではなく、製造途中の仕掛品も多くあります。そのため、6種類の製造原価から仕掛品を除外して、製造原価を計算します。

製造原価の計算式と求め方
  • 当期材料費=期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高
    この方法で当期の材料費を計算する
  • 当期総製造費用=当期材料費+当期労務費+当期経費
    1で求めた当期材料費を用いて当期総製造費用を求める
  • 当期製品製造原価=当期総製造費用+期首仕掛品棚卸高-期末仕掛品棚卸高
    仕掛品がある場合はこの計算式で除外する

なお、当期労務費は、賃金・賞与・手当・パートやアルバイトへの雑給・退職給付費用・法定福利費などを合計して求めましょう。当期経費は、賃貸料・水道光熱費・減価償却費・外注加工費・租税公課などを合計してください。

計算する際に注意するポイント

製造原価を求める際、計算方法によって管理の難易度が変わる点に注意しましょう。製造原価を計算・管理する方法は、以下の2種類が挙げられます。

1.表計算ソフトのExcel
2.会計ソフト

各方法によってメリット・デメリットが異なるので、利用前に特徴を把握しましょう。

表計算ソフトのExcelは、低コストで始められるのが魅力です。原価管理のテンプレートも入手できるため、製造原価の計算に自信がない人でも始めやすいでしょう。手軽に自社に適した形にカスタマイズできるので、Excelが得意な人におすすめです。ただし、同時アクセス数に限りがあったり、データ量の増加に応じて動きが悪くなったり、計算に関する知識がある程度必要であったりするデメリットがあります。

会計ソフトは、原価管理の機能が備わったシステムです。原価管理に特化しているソフトを選べば、経営管理に必要なデータを計算したり、リアルタイムの情報で計算できたりします。会計ソフトなら手動で計算する必要がなくなるので、製造原価の知識が少ない人でも管理できるようになるでしょう。インストール型とクラウド型があり、特定メンバーにアクセス権を付与する機能や同時アクセス数が異なるので、比較して自社に適したものを選ぶことが重要です。

製造原価を正しく把握・管理することで、事業やプロジェクトの収益向上につながる

製造原価は、製品の製造に関わる費用を指します。材料費・労務費・経費の3つに分類でき、さらにそれぞれ製造直接費・製造間接費に分けられます。

製造原価を正しく把握して管理できるようになると、製造過程の課題を発見したり、どこでどの商品を製造するかを判断したりできるようになるでしょう。さらに製造原価を細かく分類することで製品・事業・プロジェクトごとの収益向上にもつながります。

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