原価の計算や損益シミュレーションや分析などを実行できる、原価管理システム。
人力では原価管理に時間も手間もかかるため、効率化しようとシステム・ツールの導入を検討している人も少なくないでしょう。原価管理システム・ツールはさまざまな種類があるので、自社に合うものや選び方がわからず悩んでいる人がいるかもしれません。
本記事では、おすすめの原価管理システム・ツール5種類を導入費用や補助金情報とあわせて紹介します。
原価管理システム・ツールの概要や導入するメリット、導入したほうが良い企業の特徴も詳しく解説します。自社に最適なシステム・ツールを探している人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

原価管理システム・ツールとは。

原価管理システム・ツールは、原価管理の計算や分析といった業務を効率的に行えるシステムです。
システム・ツールを使って原価管理をすると、コストを削減できたり経営判断に活かしたりできるメリットがあります。 原価管理システム・ツールでできることや導入するメリット、導入したほうが良い業種や企業を網羅的に解説するので、導入の判断材料にしてください。

原価管理システム・ツールでできること。

原価管理システム・ツールでは、コストを適切に把握してリアルタイムで計算・分析し、効率的に管理できます。為替やコストなどの情報収集や原価の変動シミュレーションもできるので、経営判断にも活かせるでしょう。
原価管理システム・ツールには、主に以下6種類の機能が搭載されています。

原価計算
標準原価、実際原価、予定原価といった種類の原価を自動で計算できる機能。
期間原価計算・個別原価計算・総合原価計算・部分原価計算・全部原価計算など、複数の計算方法に対応。

データ収集
実績・費用・原料・部品表といった、原価管理に必要なデータを収集できる機能。

原価差異分析
目標原価と実際原価の差を算出し、差異が生じた原因を分析する機能。問題点の可視化や有利・不利の判断が可能。

損益計算
製品・期間・部門別に損益を計算できる機能。収益性の分析や予算編成の効率化に貢献。

配賦計算
複数の製品や部署に共通でかかる経費を一定基準で部門ごとに割り当てる配賦を計算できる機能。

シミュレーション
価格高騰・人件費アップなど、原価の変動を予測できる機能。原価の値上がりリスクを対策したり、経営シミュレーションに役立てたりできる。

なお、原価管理システム・ツールは他部署の業務とも密接に関わるため、生産管理システム・販売管理システム・会計システムと連携して利用できます。複数の部門・部署が利用することから、セキュリティ機能を有するシステム・ツールも珍しくありません。セキュリティ対策のあるシステム・ツールでは、担当者別にアクセス権限を付与したり、パスワード認証・データ改ざん防止機能・監査証跡機能といった機能を備えていたりします。

原価管理システム・ツールをタイプ分け

原価管理システム・ツールは、特定の業種や業界向け・プロジェクト管理向け・汎用的なもののといった種類のタイプに分けられます。
自社の業種・業界やプロジェクトに合うタイプを選べば、シーンや目的に適した機能やサービスを利用できるでしょう。 タイプごとに、それぞれ以下のような機能が備わっています。

特定の業種・業界向けタイプ
製造業・建設業など、各業界に特化した機能が多数あるシステム。業界ごとに必要な独自の計算を採用。 製造業であれば、工程・製品別にコストを計算し、資材費・加工費・修繕費などの配賦計算を行う。

プロジェクト管理向けタイプ
プロジェクトごとに原価を計算し、メンバーの生産性・採算性を分析できるシステム。顧客向け・社内向けの両方のプロジェクトに対応。

汎用的なタイプ
業界・業種を問わず、使いやすいシステム。従来のExcel業務をシステム化できる製品もあり、複雑な工程・配賦設定がなければ、汎用的なタイプが導入しやすい可能性が高い。

独自の原価計算が必要な場合は、特定の業種・業界向けタイプがおすすめです。プロジェクトごとにコストや収益を管理したい企業は、プロジェクト管理向けタイプを選ぶとよいでしょう。既存の原価管理システムが合わないケースや、原価だけでなく生産管理や販売も網羅的に管理したい企業は、汎用的なタイプが向いています。

原価管理システム・ツールの導入メリット

原価管理システム・ツールを導入すると、人件費や業務負担の減少・管理の精度向上・経営判断のサポートといったメリットを得られます。自社にもメリットになるか、確認しましょう。

メリット①：人件費や従業員の業務負担が減少する

原価管理システム・ツールの導入により、人件費や従業員の業務負担が減少します。
原価管理は複数の計算方法を行い、データを客観的に観察・分析しなければなりません。手動で行うと時間がかかるため、従業員にとって大きな負担になります。企業にとっては、計算能力が高い従業員を雇う採用コストもかかるでしょう。 原価管理システム・ツールを使えば計算・分析を自動でできるので、担当者は必要なデータを入力するだけで原価管理ができます。
さまざまな帳票の表示・出力もシステムで容易に行えることから、スムーズに必要な情報を獲得できるようになるでしょう。 従業員は負担が少なくなるので、生産性が高くなります。人手が抑えられることで、企業にとっては人件費を削減できる点が大きな魅力です。

メリット②：管理の精度が高くなる

管理の精度が高くなるのも、原価管理システム・ツールを導入するメリットです。
手動で原価管理をすると、計算ミスや原価変動により、誤った計算結果が出ることも少なくありません。計算の間違いは分析に影響するので、最悪の場合、経営判断を誤ってしまう可能性も出てくるでしょう。
原価管理システム・ツールを導入して計算を自動化することで、迅速かつ正確な原価管理ができるようになります。原価管理の精度が高くなれば、不必要なコストを削減し、適切な製品価格の設定を期待できるでしょう。その結果、業務効率が向上し収益が安定するため、事業の最適化につながります。

メリット③：経営判断に役立つ

原価管理システム・ツールは、経営判断に役立つメリットがあります。
従来のように手動で原価管理をすると時間がかかるので、原価変動の影響が反映されるまでに時間差が生じることもありました。迅速に分析できなければ、経営判断が遅れてしまうことも少なくありません。 原価管理システム・ツールを使えば、原価差異や原価が変動する要因など、経営判断に必要な情報をリアルタイムで得られます。
正確に原価管理して経営に影響するリスクを事前に把握できれば、適切な対策を考えられるでしょう。的確な経営判断により利益低下や損失を抑えられると、企業の競争力強化につながります。

メリット④：一元的に管理できる

原価管理システム・ツールによりデータを共有できるようになると、情報を一元的に管理できるでしょう。
システムと連携することで、原価の情報をスムーズに反映させられます。
なお、連携できるシステムは、ERP（統合型基幹業務システム）・生産管理・財務会計・勤怠管理・経費精算・電子取引など、種類はさまざまです。
システムや部署ごとに再入力する時間と手間がなくなるので、業務の効率化につながります。
さらに共有する際の人為的なミスを減らせるので、的確に経営判断できるようになるでしょう。

原価管理システムを導入したほうが良い業種・企業

以下に当てはまる企業は、原価管理システム・ツールの導入がおすすめです。

・人力での原価管理の業務負担が大きい

・原価管理の精度が低い

・原価計算が複雑で時間がかかる

・計算能力の高い従業員が不足している

・業界独自の原価計算がある

・業務を効率化したい

原価管理システム・ツールを使うと原価計算を自動で迅速に行えるため、人力の原価管理よりも業務負担を減らしたうえで、高い精度を期待できます。計算能力の高い従業員がいない企業であっても、誰でもスピーディーに複雑な原価計算を行えるでしょう。
また製造業・建設業など、業界独自の複雑な原価計算がある業種・企業も、原価管理システム・ツールならミスなく正確に情報を管理でき流ようになります。 原価管理に課題を抱えている企業や業務を効率化したい企業は、ぜひ原価管理システム・ツールの導入を検討してみてください。

導入費用

原価管理システム・ツールの導入に必要な費用は、システムの形態によって異なります。
システムの形態は、以下の2種類が一般的です。

・オンプレミス型：自社サーバーにオーダーメイドで原価管理システム・ツールを構築して運用するタイプ

・クラウド型：インターネット経由でシステムを利用する、自社サーバー不要なタイプ

オンプレミス型は自社サーバーが必要になるので、機器購入費・セットアップ費用といった初期費用が数百万円程度かかります。
一度導入してしまえば、ランニングコストは運用・メンテナンス・サポートといった費用しかかかりません。
クラウド型は、機器を購入する必要がないため、初期費用は0円または低額である傾向があります。ただし月額料金制のサービスが多いので、ランニングコストはオンプレミス型より高額になります。
なお、月額費用は数万円から数十万円とサービス内容によって異なる点に注意しましょう。

オンプレミス型・クラウド型に関わらず、機能を追加する際はカスタマイズ費用がかかります。外部システムとの連携・システムの調整など、オプション内容によって数万円から100万円かかることも珍しくありません。導入する際は、基本料金とカスタマイズ費用の合計金額を機能の内容とあわせて比較するとよいでしょう。

なお、初期費用や運用の手間を抑えたい場合はクラウド型、機能を自由に設計したい企業はオンプレミス型がおすすめです。予算や必要な機能に応じて、システムの形態を選びましょう。

システム・ツールの導入に使える補助金

原価管理システム・ツールを導入する際は、IT導入補助金を使える可能性があります。
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者を対象とした、ITツールの導入を支援する補助金制度です。労働生産性の向上を目的に、独立行政法人中小企業基盤整備機構が採択し、中小企業庁監督のもとTOPPAN株式会社が業務を運用しています。

補助金額は、申請枠によって以下のように異なります。

通常枠（自社に適したITツール）
5〜150万円または150〜450万円

セキュリティ対策推進枠（セキュリティ関連のサービスを導入）
5〜100万円

デジタル化基盤導入枠（会計・受発注・決済・ECソフトを導入）
0〜50万円または50〜350万円、PCなどのハードウェア導入は0〜10万円、レジなどの機器導入は0〜20万円

複数社連携IT導入類型（複数社が連携してITツールを導入）
デジタル化基盤導入枠の対象経費は、同枠と同じ補助金額。同枠の対象外となる経費は、50万円×グループ構成員数になる。3分の2の補助率で、上限は3,000万円 通常枠・セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入類型のPC・レジなど機器導入の補助率は、2分の1です。
デジタル化基盤導入類枠の0〜50万円の補助率は4分の3、同枠の50〜350万円は3分の2以内と設定されています。

IT導入補助金を受給する場合、以下の流れで手続きしましょう。

1.導入するITツールを選ぶ

2.IT導入支援事業者と共同で申請手続きをする

3.交付決定の連絡を受けたら、ITツールの発注・契約・支払いを済ませる

4.事業実績を報告する

5.審査が完了し、補助金額が決まったら補助金が交付される

なお、IT導入補助金について、2023年度現在の情報を紹介しています。申請する時期によって、対象者・条件・申請額が異なる可能性がある点に注意しましょう。IT導入補助金について詳しく知りたい人は、ポータルサイトを確認してください。

原価管理におすすめなシステム・ツールをご紹介

原価管理システム・ツールの導入を決めたものの、種類の豊富さからどれが自社に合うかの判断が難しいと悩む人も多いでしょう。代表的な原価管理システム・ツール5種類をシステム・ツールの選び方とともに解説します。

原価管理ツールの選び方

原価管理システム・ツールを選ぶ際は、以下の5つのポイントを確認しましょう。

・自社の業界・業種に合う

・現在使用している他のシステムと連携できる

・従来のExcelを活用できる

・カスタマイズできる

・自社に合う原価の配賦方法である

原価管理システムの機能は幅広いため、自社の業界・業種に合うものを選ぶことが大切です。
自社の課題を分析したり、競合他社の導入状況を見たりして決めるとよいでしょう。
また現在使用している他のシステムと連携でき、従来のExcelを活用できるシステム・ツールであれば、情報を共有しやすくなります。既存のシステムを活かしながら、業務効率を高くできるのも嬉しいポイントです。
さらにカスタマイズできるツールなら、運用中に課題が発生しても柔軟に対応できます。自社に適した機能を追加することで、効率的に運用できるようになるでしょう。 原価の配賦方法も、システム・ツールを選ぶ際には重要です。配賦を設定するのは複雑で手間がかかるため、自社に合う配賦方法を搭載したシステム・ツールを選ぶと導入時の負担を減らせます。

【どっと原価シリーズ】建設業・土木工事業向け！プランが豊富

株式会社建設ドットウェブが提供する「どっと原価シリーズ」は20年以上の発売実績がある、建設業・土木工事業におすすめの原価管理システムです。
NSK株式会社・北陸綜合ビル管理株式会社・誠勝建設株式会社など、多数の企業が導入しています。
オプションを企業ごとに選択できるため、自社に合った機能を搭載できます。
導入後もカスタマイズできるので、状況に合わせて柔軟に導入できる点が魅力です。
さらに、建設業向けの機能は随時更新！利用中の帳票のレイアウトはそのまま使えるため、提出先ごとに書式を変えることも可能です。さまざまなシステムと連携できることから、業務効率化につながります。 なお、企業規模や必要な機能数に応じてクラウド型とオンプレミス型を選べます。

クラウド型は月額13,000円から、オンプレミス型はソフトウェア価格が850,000〜1,300,000円で、KDSS保守スタンダードは102,000〜156,000円です。 導入を検討したい人やオプション内容や料金が気になる人は、公式サイトをチェックしてください。

【スマートF】製造業向け！低コストなクラウドシステム

「スマートF」は株式会社ネクスタが提供する、高い拡張性と低コストが魅力のクラウド型生産管理システムです。
旭化工株式会社・宮川化成工業株式会社・株式会社サーガなどで利用されています。 機能数が豊富でカスタマイズもできることから、自社のニーズに適した設定を実現。週1でアップデートするため、現場の声を迅速に反映できます。一部の機能・部署だけに導入する部分導入や、サポート付きのトライアル導入ができる点も大きな魅力です。少しずつ試しながら機能を増やせるので、損失を抑えられるでしょう。原価は、品番・ロット毎に管理できます。バーコード入力なので、手間やミスを防げるでしょう。
なお、費用は機能数・ライセンス数によって異なります。一度に導入しても後から機能を随時追加しても、金額はほとんど変わらないので安心してください。自社ならいくらになるか気になる人は、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

【クラウドERP ZAC】900万社以上が導入！プロジェクトごとの管理におすすめ

株式会社オロ提供の「クラウドERP ZAC」は、プロジェクトごとに管理したい企業におすすめのクラウドERPです。
IT業・広告業・クリエイティブ業・士業・コンサルティング業などベンチャーから大手企業まで900万社以上が導入し、30万以上の利用ライセンス数を誇ります。
具体的には、株式会社JALインフォテック・株式会社早稲田大学アカデミックソリューション・株式会社KSKといった企業が導入しています。
案件・契約・プロジェクト単位で、仕入・経費・売上・外注費・勤怠を管理できるのが魅力です。損益情報を瞬時に把握できることから、事務処理業務を効率化できるでしょう。
財務会計・請求書・Excel自動化といったシステムとも連携できます。経費申請に必要な入力項目が一目で分かるため、誰でも簡単に入力できるでしょう。

費用は、ZAC初期設定費用が100,000円で、希望者には導入支援費用がかかります。月額ライセンス利用型サービスなので、毎月のランニングコストとしてライセンス費用・保守費用の支払いも必要です。自社の課題を解決できる見積りは、公式サイトからお申し込みください。

【プロカン】案件やプロジェクトごとの収支管理に特化したクラウド型（SaaS型）の基幹業務システム

「プロカン」は、20年以上の実績のあるイベント会社から生まれた株式会社シービーティーが提供するプロジェクトごとの収支管理に特化したクラウド型（SaaS型）の基幹業務システムです。

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今あるExcelをそのまま活用して、業務を効率化するためのシステムを構築できます。 Excelのデータを登録することで、データを一元的に管理できるのが魅力。計算式やフォーマットは自動で保護してくれるため、勝手な改編を制限できます。エラーチェック機能があるので、人為的なミスも防げるでしょう。

ユーザー単位でアクセス権限を設定でき、セキュリティ対策も可能です。 業種を問わず使いやすいシステムであることから、アラマーク ユニフォームサービスジャパン株式会社・生化学工業株式会社・パーソルホールディングス 株式会社などで導入されています。
さらに自社の状況やニーズに応じて、クラウド型とオンプレミス型を選べるのも嬉しいポイントです。費用は月額120,000円からですが、ユーザー数や機能によって料金が変わるので、詳しくはお問い合わせください。

【まとめ】原価管理は企業・事業の成功に必要なこと。システム・ツールを使って効率的に。

売上ばかりに目が行きがちな企業経営・事業運営において、原価を管理することは非常に重要です。しかし、人力では時間や手間がが非常にかかります。
効率的に原価管理を行うためには、原価管理システム・ツールの利用がおすすめです。
システム・ツールを使って効率的・効果的に原価管理を行うと、迅速かつ正確な経営判断ができるようになるので、企業や事業の成長にもつながります。是非、自社に適した原価管理システム・ツールの導入を検討してみてください。